<<写真展の個人的な感想>>
◎よかった点
<<epSITE個展の裏話>>
7月のepSITEでの展示では、「自然との共生」がテーマでした。このテーマは壮大すぎて、1アマチュア写真家にはとても表現しきれません。しかし、私が御蔵島に通った10年の年月で実際に感じたこと、それは大自然の厳しさ、美しさだけでなく、繊細さでした。このままだと、自然は残せない…自然は人間にとって不可欠なものではないのか?御蔵島、イルカはあくまでも題材で、訴えたかったのは、人間は今後、大自然とどうかかわっていくべきなのだろうか?、ということでした。メッセージ性を高めようと、キャプションを入れることにしました。
御蔵島には毎年、多くの観光客が訪れます。はじめての人もどんどん来ます。御蔵島観光協会では、島を観光する人数に制限をかけているものの、やはり本来の自然をそのまま残していくのは難しそうです。御蔵島を愛するものとして、島のために、また同じような状況の他の観光地のためにも、自然とのかかわりを考えるきっかけにしてほしい…。幸い、10年にわたる撮影で、御蔵島の海の写真なら、プロの写真家にも負けないという自負がありました。それは個人的な思い込みではなく、雑誌の月例、公募展などへの応募そして入選という客観的な結果からの判断です。
展示にあたっては、応募時は40枚ほどの展示を考えていました。しかし「インパクト」という点から、会場正面に、ドカンと1枚、巨大写真を置きたいと思いました。会場担当者に相談し、悩みに悩んだ末に写真を決定し、下の写真真ん中、幅2m、高さ3mという作品に仕上げました。epSITE(gallery2)では、正面に巨大な縦位置写真を1枚展示というのははじめてだそうです。
選定作業以上に本当に大変だったのが、作品の印刷作業でした。epSITEでは全ての作品を自分で印刷しなければなりません。これまで、せいぜいA3ノビの作品しか印刷したことがない私は、写真の質がこんなにも厳しく問われると思っていませんでした。A4くらいでは全く問題ないと思われるような画像の荒れも、A2に伸ばすととても目立ちます。今回は全てデジタルでしたが、ほとんど全ての写真を、RAWデータから現像しなおさなければなりませんでした。1枚の写真を仕上げるのに、画像ソフトを3つ使いました。中でも特に大変だったのが巨大写真!何度も現像をやり直し。写真の4分割も大変。1600万画素のカメラで撮ったとはいえ、B0ノビ4枚を組み合わせるということは1枚あたり、400万画素になるのです。400万画素の画像をB0ノビに伸ばすのがそもそも無謀。担当の人に最初に試しプリントを見てもらったときは「これはひどい、展示できない」と言われたほど。この1カットだけで、何日もかかったのです。
結果として、画像処理に対して、写真印刷の質に関して、ものすごく勉強になりました。写真はプリントしてこそ完成する、しかも大きく伸ばさないと写真のよさってわからないと実感しました(全ての写真を大きくすべきとは思いません、小さいプリントのほうがいい写真もあります)。また最後には全ての写真に関して納得いく仕上がりにできました。巨大写真に関しても、結局多少はざらざらになってしまいましたが、あれはよかった、という感想をたくさんいただきました。
いよいよ写真展初日。私にとってはじめての個展がはじまります。人が入ってくるかな…とても緊張しました。最初に入ってきたのは…「昨日の船で御蔵に行こうと思ったら欠航になって、やりきれずにWebを見てたらこの写真展を知って」というカップルでした。HPがきっかけで知り合った仲のいい夫婦の、旦那のほうが2番目に来てくれて。午後に奥さんもきてくれて、「おめでとう!!」て涙ぐんでくれて。長野県のほうからも…ネットでしか知らない人もお花を持ってきてくれたり、「花が届いてますよ」と聞いて見ると、妻とそのお母さんからだったり。週末に写真展から帰ると、小倉からビールが届いてたり!!うれしいのうれしいの…。私が本格的に写真をやるきっかけとなった、『e-Photo旬の写真館』のメンバーも全国から集まってくださいました!!
<<キタムラ個展の裏話>>
7月末〜8月のフォトギャラリーキタムラでの展示では、「個性を出した写真」をテーマにしました。というのも、JPS奨励賞の副賞として実現したものだし、epSITEと同じような写真では、2回やる意味がないからです。そして、epSITEだけでも大変というのに、作品の締め切り(こちらはデータのみ)もあり、写真がなかなか決められないでいました。epSITEではまじめな内容なので、キタムラのほうでは遊びを入れた写真にしよう!と。右の案内ハガキ写真に代表されるような(笑)ギャラリーキタムラの人のコメントもあり、イルカ・海だけでなく、陸の写真も入れることにしました。
見て楽しい写真展にしようというものの、心地よく鑑賞していただくには流れも考えなければなりません。島に行って、イルカと遊んで、イルカの魅力を再発見…そして島を後にする。そして、会場の4辺に、何枚置くか、全紙を何枚、半切を何枚…展示したい作品、コンテストに出したい作品(=展示できない作品)…。難しく、結局自分では決められず、最終的にはギャラリーの人と決めたのでした。
ちょうど、epSITEに来てくださった、小澤太一さんの個展と同時期で、彼の初日の「オープニングパーティー」に参加してもいいとの返事をいただいたので、参加させていただきました。雑誌でしか見たことがなかった有名な写真家の先生がたくさん来ていて感動しました。中でも米美知子先生とお話できたのはうれしく、名刺をさしあげたところ「くらりっぱさんの顔と名前がやっと一致しました」と、私のことを知っててくださったのです!シグマの方とも知り合えて、DPシリーズについていろいろと語りました。そこで出会ったシグマの方、UNの方はキタムラの個展に来てくださりました。
<<写真展を振り返って感じたこと>>
プロの方からいただいた、当時の私の意気込みとは違う方向のコメントを2つ紹介します。
「独自性の高い写真ばかりでなく、一般受けする写真も力を入れて撮るべきだ」
「イルカはもう十分、陸の写真が見たい」
意外でした。私にはまだまだ、自分のイメージとして「こういうイルカ写真が撮りたい」というのがあります。まだ撮れていないイメージがたくさんあります。独自性のある作品を撮ってこそ「これがくらりっぱのイルカ写真だ」と言いたいと思い、今までがんばってきました。キタムラの個展では、ポストカードも販売、ほぼ全ての展示作品をポストカードにしたのですが、一番売れたのは、独自性の高いものではなく、一般受けする作品でした。それをプロの方は見抜いていたのです。ハッとしました。逆に言うと、「一般受けする写真も撮っていかないと写真家として成功しないぞ」というメッセージだったのかもしれません。2番目のコメントは複数のプロの方からいただきました。「イルカの写真はもう自分のものになってるね。それに比べて、陸上の写真はまだよそ者が撮った写真みたいで、甘い」と。まさに!!自分でもそう感じていました。「イルカを撮りたいのはわかるけど、陸の写真も極めれば写真家としてすごいね」と。…12月、冬の御蔵島の山の風景を撮影しに行きました。
思えばあっという間の10年。毎回の旅行では、せいいっぱい写真を撮っていたはずです。。。しかし、見た景色、撮りたい景色を全て撮っていたかといえば大きな疑問符がつく。体力的なこともある、島で知り合った人との楽しみもある…。しかしそのときの景色は2度と撮れない。最近まで、陸上の島の写真がほとんどないことに気がつきました。どんどん変わっている島を撮れていませんでした。写真の技術もあります。10年間撮っているとはいえ、写真をはじめたのが10年前で、その頃に撮った写真(フィルムでしたが)は、写真展に展示できるレベルではない…でもうまい写真を撮れないよりは、下手な写真をたくさん撮っておくべきでした。
<<いろいろなところに掲載>>
いろいろなところに、私のことを載せてもらいました。フォトコンの1月号もびっくりしましたが、一番の思い出はフォトコン7月号の口絵掲載でしょうか。写真をやってるものにとっては夢みたいなことでした。すごいことしちゃったな…と思います。フォトコン編集部のみなさまには大変お世話になりました。ありがとうございました。
【水中写真について】
フォトコン1月号「入選作品の裏側」
【写真展について】
フォトコン7月号の口絵に掲載
ローカル新聞に大きく掲載
epSITEの会報誌に掲載
写真展情報は朝日新聞、読売新聞、フォトコン、アサヒカメラに掲載
<<写真展以外でのコンテスト応募>>
2009年は難関と言われるフォトコン「ネイチャーフォトの部」月例に何度も入選!自分に何が起こったのか…イルカにこだわり、自己最高13位でした。
<<2009年を振り返って>>
[1] DP1でイルカ撮影
なんといっても、旅行日記で「新兵器」と書いたもの。この場ではじめて告白します。DP1をハウジングに入れてイルカを撮りました。これはかなり勇気のいることでした。まず、レンズは28mm相当。イルカ撮影には、通常は魚眼〜せいぜい24mmくらいまでだと思います。アップになりすぎるし、ぶれも生じてしまいます。また、レスポンスがおせじにもいいといえないDP1で動きの速いイルカを撮るなんてことは不可能に近い。一度シャッターを押すと、10秒以上は撮影できないのです。シャッターを押した5秒後に最高のシャッターチャンスが来ても撮れないのです(実際にそういう経験を何度もしました…)。ISO感度も、せいぜい400まで。ISO800だと作品にはならない(※)と思い、暗い御蔵の海でちゃんと撮るには晴天で光がかなり入るか、水面近くで光量をかせぐしかないなと。
でも、「DP1で水中写真を、イルカを撮ろう」と思いました。一眼レフでも撮れない、「色彩」や「立体感」。2008年3月に購入したDP1を1年間使ってみて、その表現力の高さにほれこんでいました。「このカメラなら…」
撮らなければ、写らないのです。ハウジングは一眼レフハウジングほど高価ではありませんが、半額にはなりません。ハウジングをつくったはいいものの、まともな写真が撮れなかったらどうしよう…とかなり悩んだ末、実に1年近く悩んだあげく、結局つくりました。
2009年の撮影では、DP1の出番はそれなりにありました。しかし撮影できる枚数は一眼レフに比べて1/20とか、場合によっては1/100とか。「下手な鉄砲も数うちゃ当たる」と言いますが、DP1では数が打てない分、シャッターチャンスを十分考えなければなりません。DP1を持つかわりに、一眼レフを持って海に入れば、最高の写真は撮れないかもしれないけど、それなりの写真は必ず撮れます。しかしDP1は、チャンスを逃すと、写真が一枚も撮れないということも珍しくありません。また、シャッターを押した直後に最高のシャッターチャンスがきても何もできないのです。いつが最高潮なのか、判断が非常に難しいんです。自分で実は下手なのかも、とDP1でイルカを撮りだして感じました(笑)しかし、一眼レフハウジングよりははるかに軽い。小さい。イルカとも一体になれる感じです。これを使いこなせれば…と思ううち、それほど写真が撮れないうちに1年が終わってしまいました。DP1で撮影したイルカ写真は、数が少ない上ほとんどがボツです。でも、たまに、ものすごいシャープな写真で、しかもすごい色のものがあります。やはり大作が撮れる可能性はある。2010年も引き続き撮っていきたいと思います。
(※)その後、シグマの人の話によると、現像ソフトの進化によってISO800でも十分作品レベルになるだろうということです。
[2] 冬の御蔵島
御蔵10年目にして、はじめて冬に御蔵島に行きました。毎年行こう行こうとは思っていたものの、11月は紅葉の写真を撮りに出かけてしまうし、年末年始は忙しいし、2月、3月は仕事がたてこんできて…というパターン。しかも、オフシーズンの秋〜冬は船がなかなかつかないので、空路で行かざるを得なくなり、そうすると交通費がかかり…。よほど強く「行こう」と思わないと、行けないのです。ところが今年は、写真展で言われたこともあり、「山の風景も撮ろう」と決めていたので、強い意志を持って行きました。結局、往復、船+空路になりました(涙)。費用はかかりましたが、今まで見たことのない、冬の御蔵島の表情を見ることができ、感動しました。島での滞在時間は24時間もなかったのですが、写真は1000枚ほど撮ってきました。
<<2010年は>>
個展に来た大勢の人から「また個展をやってください」と言われました。開催前は、しばらくやらないつもりだったのですが、あまりにもまたやってください、という声が多く、2010年も何らかの形で個展をやりたいと思っています。
また撮影に関しては、写真展で得たフィードバックを活かして、個性ある表現をしていきたいと思います。特に、フィルム撮影を復活させたい、ニコノスVでぜひまた撮りたいと考えています。フィルム、デジタル、それぞれの特性を活かした撮り方をしていきたいです。イルカだけでなく、陸の、村の、山の風景も、星空も、流星群も、冬の富士山も、御蔵島でしか見ることができない風景をたくさん収めていこうと思っています。
<<最後に>>
さて、epSITEで展示した巨大なイルカ写真(縦3m×横2m)、どなたかいりませんか?実費で…お譲りします。イルカがトレードマークの会社さん、ないでしょうか?眠らせ続けるのはもったいないと思っています。欲しいという方は、くらりっぱまでご連絡ください!(上の「ご意見・ご要望」からメールを送っていただけます)
くらりっぱはコンテストを通して全国の写真家と競いながら写真の技術を高めていきたいと思っています。 コンテストによっては、個人のホームページに掲載した作品は公表したものとみなされ、応募できない場合も あるため、コンテストに応募する予定の作品は基本的にはホームページ(およびブログ)には掲載しないようにしています。 御蔵島に旅行に行った際につくるスライドショーは別格で、コンテストレベルの写真でもスライドショーに 入れるようにしてはいますが、そのかわり、期間を限定し、パスワードを入力しないと見れないようになって いるため、「公開」にはあたらないと思っています。しかし、本当にお気に入りの場合はスライドショーにも入れない写真もあります。
つまり、このホームページに掲載する写真は、くらりっぱのとびっきりの写真は(入選作品、写真展で公開した作品以外は)掲載 していないのです。感動の写真を期待して、このホームページを訪問してくださる方々を裏切ることとなっていますが、 ご理解いただけますようお願いいたしますm(__)m
2010.2. くらりっぱ
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