本当にいい写真を撮るには、写真のテクニックだけじゃない、 泳ぎのテクニックだけじゃない、イルカの生態についての 勉強と理解とあつい思いが何よりも大事だと感じています。 相手は野性のイルカ。いつもノリノリで遊んでくれるとは 限りません。そんなイルカを執拗に追いかけても、たとえ いい構図でうまい写真が撮れたとしても、それはその人の エゴであり、その写真は他の人を感動させないでしょう。 イルカが人間に興味ないときはただ見てそっとしてあげる、 遊んでくれるときはただ写真を撮るだけでなく、一緒に 遊びながら写真を撮る、そういうことでイルカのいい表情 が撮れると思うし、そういうチャレンジをしてきました。
1秒で8コマ連写できて最速レベルAFを持つEOS-1D。確かに
すごいいい写真は撮れるし、人を感動させる写真を撮れた
ように思います。しかし、アナログ→デジタルの移行期
にも感じたことですが、道具が便利になった分、1枚1枚
の写真に対する思い入れというのが希薄になった気がし
てしまいます。
連写できたほうが、確かに失敗も少ないし、たくさんの
カットから一番いいものを選べる。でも、1年間そうやって
撮ってきて、心のどこかにぽかんと穴があいたような。
なんか、道具にふりまわされているような。ハウジングに
入れるとこれまたずいぶんな大きさで、イルカの注目度
はすごいですが思うように泳げません。疲労度もハンパ
じゃなく、もうこんなの持って入るのは嫌だと何度も
思ったことでしょう(笑)
ニコノス(フィルムの水中カメラ)でも十分、いい写真が
撮れます。でも一度に36枚しか撮れないし、ここぞという
ときに大失敗もよくあります(笑)。今年の6月に、すごい
数のイルカと出会い、デジタルは全てバッチリでしたが、
ニコノスは全て露出不足でフィルム1本無駄にしました。
しかしだからこそ撮れたときの喜びも大きい。1枚にかける、
野性イルカと自分がシンクロして最高潮に達したときに1枚、
「カシャッ」と。そんな写真を来年は撮りたいなぁと思います。
「よっしゃ!」というおたけびを発した(笑)あのときの
集中力を取り戻したいですね。
やはり一番のチャンスは一瞬でしかなくて、いくら連写 しても、最高のチャンスは連写と連写の間の瞬間かも しれない。連写に頼りすぎるからゆえ、一番のいいチャンス を逃す、そんなことも多少なりとも経験しました。技術不足で、機械に 頼るがゆえの失敗も多かったです。
来年は一瞬一瞬をもっと大事にして、一コマ一コマをもっと もっと大事に撮っていきたい。自分が納得いくまで撮って みたい。それができてから、また連写で写せば、今年より はるかにいい写真が撮れると思うのです。そういう意味で 最終的には私にとってはやはりEOS-1Dだなと確信しています。 技術レベルを上げれば上げるほど、使いこなせるカメラ。 今はまだそこまで技術がついていっていないのです。
今年の4月、はじめて1Dで撮って写真をチェックしたとき、 「ニコノスはもういらない」と思いました。が、ニコノス こそ、いや、極端なことをいえば、使い捨てカメラこそが 今思えば、私にとっての大事な機材だと感じています。
来年はホームページを通して、自然の大事さ、素晴らしさ、 イルカと出会える喜び...ただきれいな写真だけでなく、 写真を見る人と心が通じ合えるようなサイトを目指します。
2004.12. くらりっぱ
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