写真家の心

counter: 4603

個展展示作品(2.6m×2m)

1.デジタルが進化して写真家に問われること

デジタル一眼レフを使ってイルカを撮る人がようやく増えてきました。2006年あたりからぽつぽつと見かけていましたが、去年になって一気に増えた気がしています。5年前に想像していたことですが、カメラは想像をはるかに超えて進化し、シャッターを押せば誰もがそれなりのイルカの写真を撮れる時代になりました。

くらりっぱの2005年撮影雑感より:
"カメラもどんどん進歩し、今私が撮ってるような写真は多少泳げる 人なら誰でも撮れるような日がくるはずです。でもみんな同じ 写真じゃ...つまんないよね。イルカ写真といえば、正面からイルカが いっぱいくるとか、一緒に泳ぐとか、深くから逆光でシルエット とか、そんなのは○○さんしか撮れない、とはなりませんよね。 +αの個性とか、そういうものが作品としては必要です。"

今まで以上に、個性の時代になってきたと思います。個性をどうやって出すか。技術はもちろん、精神が問われていると思います。イルカに対してどういう気持ちでいるのか。それが一番大事なのではないでしょうか。

特に最近、撮影中にイルカに近づきすぎる人が多いと感じます。広角レンズをつけてイルカを撮影する人は特にその傾向が強い。イルカに近づく前に、本当にイルカの迷惑になっていないかどうか、覚めた目で自分自身を見つめてほしい。自分のためにイルカを撮るのか、イルカのためにイルカを撮るのか。写真はカメラマンの気持ちも同時に写る。いくらイルカに近づいてもエゴで撮っていては何も伝わらないのです。御蔵島のイルカの数が減ってきているのは、人間の影響があることは否めないと思います。御蔵島観光協会では、イルカツアーを制限するなどしていますが、それでもたくさんの人間が海に入ります。御蔵島が有名になってしまった今は、イルカがいつまでも御蔵島に住み続けられる環境を持続するために、御蔵島を訪れる人の意識を変えていかなくてはなりません。それはイルカに大きく依存する御蔵島の観光産業のためでもあるのです。

イルカの写真を見て、かわいい!とか一緒に泳ぎたい!と思うのは当然のことです。しかし、私の写真をきっかけにして御蔵島に行った人が自分勝手にイルカと泳いでイルカの迷惑になっているかもしれないと思うと心が痛みます。写真にはそのときの私の感動が写っているとすると、それによってイルカに会いたいと思ってもらえたらこの上なくうれしいはずなのですが…。

「イルカに優しく」は私の撮影のモットーですが、それだけでなく、イルカをいたわる気持ちも伝わる写真を撮りたいと思っています。

2.3回目の個展「イルカ博物館」〜イルカの世界を体験〜を開催して

「イルカ博物館」2010年9月


石川優美さん&Ponolaniさん ミニライブ


平井美鈴さんトークショーの後、記念撮影(個展会場にて)
2009年の2回の個展に続いて2010年にも個展を開催しました。2009年の時点では、個展はしばらくやらなくていいと思っていました。ところが2009年に個展を開催したら、「ぜひまた個展をやってください」という声がとても多かったのです。1年前の個展の反省もふまえて、また違った感じで個展を開催したいと思うようになりました。

くらりっぱの2009年撮影雑感より:
×個展の悪かった点:
"写真展は一般の人、特に小中学生などは足を運ばない。ギャラリーでの開催は写真家にとっても敷居が高いが、一般の人にとっても気軽には入りづらい。イルカの写真、本当に見てほしいのは子供なのに…。"
"仕方ないのだが、全日程会場にいれなかった。せっかく来てくれた方々(中村征夫先生や友達)に会えなかった。本当に残念だし、申し訳ないです。"

今回の個展の目標は、(1)子供でも楽しめる内容であること(2)全日程会場にいられること でした。実は2009年の12月くらいから、個展会場を探していました。しかしなかなか、自分の思いに一致する場所を見つけられませんでした。今年はあきらめようか…と思っていたとき、会場となったスペーススプラウトのことを知りました。すぐに連絡をとり、会場を下見しました。こじんまりしたギャラリーでちょうどいい。あみぐるみ協会が管理しているギャラリーで、子供のお客さんもOKとのこと。写真のレイアウトもかなり自由にでき、個展の時間も自由に決められると知り、即決しました。自分の仕事に支障をきたさないように、また仕事帰りの人にも見てもらえるように、個展での時間を13時〜20時にしました。これで(2)はクリアです。

写真のレイアウトも、普通の写真展にはないものにしようといろいろ考えました。イルカの空間をつくり、海にいる気分で写真を見てもらいたい、また子供でも楽しめるように、会場に工夫したい、と思いました。通常写真展は大人の目線の高さに写真展が飾ってあります。これでは子供に楽しんでもらえません。写真だけでなく、イルカや海にも興味を持ってほしいと、イルカクイズも用意することにしました。イルカクイズは難しすぎると不評だったものの、小学生が見事に全問正解してくれてうれしかった。

個展開催を決めた時期と前後して、石川優美さんとの出会いがありました。きっかけは本当に偶然で、5月に御蔵島で会った女性にさしあげた私の写真を石川さんが見たことでした。石川さんご夫婦はハワイアンソングを演奏するユニットで、プライベートレーベルを立ち上げています。そんな石川さんご夫妻のライブと私のイルカ写真をコラボしたい、というお話でした。

石川さんのライブも何度か聞き、その演奏、歌声に引き込まれた私は、ぜひ私の個展で石川さんにライブをしてほしい、と思いました。

石川さんとの初コラボは、個展直前の8月末に下北沢で実現。ライブ会場のバックスクリーンに私のイルカ写真を大きく投影し、子供にも大人にも大変楽しんでいただくことができました。

石川さんと出会った頃、沖縄でフリーダイビング世界選手権が開催されました。私の2004年以来の友達である平井美鈴さんは日本代表として参加しましたが、見事金メダル!平井さんが競技を続けるには資金が必要なのは知っていました。個展および販売サイトで平井さんとイルカが写っている写真をポストカードにして、販売利益を全額寄付することを思いつきました。また平井さんさんはフリーダイビングという競技を多くの人に知ってもらいたいという思いもあるとのこと、私の個展でフリーダイビングについて話してもらえればと思いました。

石川さん、平井さんと日程を調整したところ、同じ9月4日(土)にミニライブとトークショーをしていただくことになりました。個展の特別企画にはどのくらい多くの人が来てくれるか、想像もできませんでした。せっかくライブ、トークショーを快諾してくださったのに人がこないのでは申し訳ない、なんとかして多くの人に来てほしい、と思っていましたが、特別企画当日はびっくりするほどの人!うれしい悲鳴でした。

この結果、私の目標はある程度は達成できたと思っています。

しかし、反省点はたくさんあります。

まず、準備。今回も大伸ばしの写真を展示しましたが、6点の写真の準備が想像以上に大変でした。印刷は印刷会社に頼めばいいのですが、データの作成が、ノートPCでは非力でした。。。。

そして会場の設営。 大きい写真をつなぎ合わせる作業や、天井に写真をつるす構想がかなり難しいことが、設営時にはじめてわかり、パニックになりました。イルカの空間をつくることを何よりも優先したかったのですが、それができあがる前に個展の開場時間となってしまい、私の友達が遠くから来てしまったのです。申し訳ないけどしばらく時間をつぶしてもらったものの、設営が終わりません。友達も続々と来てくれて、とりあえずは設営半ばで入ってもらうことにしました。初日に来てくれたみなさん、設営を手伝ってくれたりして、大変感謝しています。初日終了後も設営を続けましたが完成せず、ようやく完成したのは2日目が終わってからだと思います。途中でご来場いただいたみなさまには大変ご迷惑をおかけして、本当に申し訳ありまんでした。事前によく設営の計画をたてておくことがいかに大事か、設営作業がいかに大変かを身をもって体験しました。

写真展の広報。開催を決めてから開催までの時間がなかったため、広報が思うようにできませんでした。特に、7月から小学校が夏休みになってしまったため、学校への連絡が開催直前になってしまったことは大きな反省点です。

入場者数は、目標よりかなり少かったが通りすがりの人はほとんど期待できない場所であることを考えると、よかったのかもしれません。新宿のギャラリーで開催したときと同じくらい多くの方々が来てくださり、本当に感謝しています。

利島のイルカと平井さん

3.東京愛らんど応援隊に入隊、そして利島へ

ちょっとしたきっかけから、「東京愛らんど応援隊」に入隊することになりました。御蔵島担当としての私のミッションは、伊豆諸島のことをより多くの人に知ってもらい、観光に来てもらうことです。

私の個展の特別企画で様々な出会いがありました。平井さんのトークを聞いた女性が、平井さんとイルカを撮るために利島旅行を企画、平井さんとイルカの新しいポストカードをつくろうと思っていた私にも声がかかり、利島旅行が実現しました。この旅行で、船の上での撮影のためにニコノスを持って行きましたが、フィルムのよさを再び実感し、2011年はぜひフィルムでという思いを強くしました。

2010年の撮影を振り返って

反省点はいろいろあります。(1)DP1での撮影はあまりできなかった。(2)山の撮影:例年よりは山での撮影を増やしましたが、まだまだ足りません。(3)今年はフィルム撮影をがんばろうと思っていましたが、今年はじめての4月の撮影時にニコノスをはじめて水没させてしまい、まともに撮ったのは7月と8月だけ。結局あまり撮れませんでした。(4)2010年は冬に御蔵島に行けませんでした。

しかし、個展展示用の大伸ばし写真を撮れたこと、山の撮影に行けたこと、そして何よりも、様々な人に出会えたことが大きな収穫でした。

近年のデジタルカメラの特徴といえば、高画質の動画が簡単に撮れるようになったことです。しかし、撮影スタイルが写真とは全く違いますね。イルカの動画を撮るという意味では、違う技術が必要だと感じました。私も動画は撮っていきますが、まずは静止画を極めたいという思いでいます。

12月、クラッセWを購入

「フィルムで撮りたい」という思いはここ数年で強く思っていましたが、いざ海に入るとやはりデジタルで撮ってしまいます。しかし、2010年はフィルムで撮りたいという思いをさらに強くさせた旅行がいくつかありました。中でも、2009年〜2010年にの年越しレソト旅行、そして11月の利島旅行です。特にレソト旅行では、妻が(初代)クラッセで撮影した写真は空気間というか、雰囲気というか、とても印象的なものばかりでした。クラッセとフィルムのすごさに衝撃を受けました。また11月の利島旅行では、ニコノスで撮影した写真がとてもいい雰囲気でした。 そんなとき、ふとインターネットを見ていると、クラッセWの新品がが思いがけず安く売ってるサイトを発見!しかも、1日限りらしいのです。1晩悩みましたが、購入!12月3日に届きました。2011年はクラッセW、そしてフィルムでも御蔵島を撮りたいと思います。

<イルカ写真掲載の基準について>

くらりっぱはコンテストを通して全国の写真家と競いながら写真の技術を高めていきたいと思っています。 コンテストによっては、個人のホームページに掲載した作品は公表したものとみなされ、応募できない場合も あるため、コンテストに応募する予定の作品は基本的にはホームページ(およびブログ)には掲載しないようにしています。 御蔵島に旅行に行った際につくるスライドショーは別格で、コンテストレベルの写真でもスライドショーに 入れるようにしてはいますが、そのかわり、期間を限定し、パスワードを入力しないと見れないようになって いるため、「公開」にはあたらないと思っています。しかし、本当にお気に入りの場合はスライドショーにも入れない写真もあります。

つまり、このホームページに掲載する写真は、くらりっぱのとびっきりの写真は(入選作品、写真展で公開した作品以外は)掲載 していないのです。感動の写真を期待して、このホームページを訪問してくださる方々を裏切ることとなっていますが、 ご理解いただけますようお願いいたしますm(__)m

2011.4. くらりっぱ

==>2004年撮影雑感も読む
==>2005年撮影雑感も読む
==>2006年撮影雑感も読む
==>2007年撮影雑感も読む
==>2008年撮影雑感も読む
==>2009年撮影雑感も読む